【開催報告】立体協ワークショップ「空間を利用したゲーム」
立体協2011年度第1回ワークショップ「空間を利用したゲーム」が、8月9日(火)に開催されました。
多くの聴衆を集めたことで、会員の皆様の関心の高さを示すこととなりました。
和やかな雰囲気の下、ゲームジャーナリストの新 清士様、元任天堂で立命館大学のサイトウアキヒロ先生、ソニー・コンピュータエンタテインメントの高橋つねみ様に、ご講演をいただきました。
まず、ゲームジャーナリストの新 清士様からは、「空間を使ったゲームの最新動向」ということで、主にマイクロソフトのKinectを中心として、空間を利用したゲームに関してご講演いただきました。
Kinectは、本来はイスラエルの軍事産業から出てきたものですが、150ドルという値段も助けとなって、予想外の大ヒットとなり、1200万台以上が出ているとのことです。
その戦略は、Open Platform戦略(イノベーションの民主化戦略)ということで、皆さんにアプリを作ってもらおうことで、開発速度を一気に高めることが成功したとのことです。
ご講演では、実際にKinectを使ったWEB上にあるアプリを多く紹介いただき、これによって新たな領域にゲームが進出していく感触を肌で感じさせていただきました。
次に、元任天堂で立命館大学のサイトウアキヒロ先生からは、「空間を利用したゲームに重要なポイント」ということで、任天堂の戦略を含めて、Wiiを中心とした苦労話を交えながら紹介していただきました。
任天堂の基本戦略は、「ゲームニクス」という言葉に集約されており、如何にユーザー目線でゲームのインターフェイスを作っていくかということが最大の課題になっている点です。簡単に言うと、ゲーム中に、ユーザーが次に何をやればよいかということが、ゲームをやりながらそのまま分かるようにすることが重要と言うことです。
Wiiの開発に際しては、3次元センサーのあいまいな動きを、如何に確実なデジタルに変換するかがキーポイントだったということでした。つまり、3次元センサーが精度よく働くことが重要なのではなく、ユーザーが「こういう動きをさせようと思った」という動きをさせられるかどうかが重要だということでした。つまり、「こう振りなさい」ではなく、ユーザーが振った動きを感覚的に同じにとらえられることが重要なのだそうです。したがって、システム的にはわざとセンサーから遅れて動かしたり、随所に今までとは異なる視点での工夫がなされているということでした。
最後に、ソニー・コンピュータエンタテインメントの高橋つねみ様に、「空間情報をゲームの世界に取り込むPlayStation(R)Move」と題して、PlayStation(R)Moveのシステムにまで言及していただきながら、ご紹介いただきました。
PlayStation(R)Moveにおいては、3次元センサーとして、モーションセンサーに加えて、カメラによる画像認識を加えることで、特に奥行き方向のセンサー精度を向上させ、正確な動きを再現させているとのことでした。ここで、カメラでは主に大きさの変化を見ることで奥行きを測定するとのことでした。
また、Cell が高性能であるため、センサー処理や描画処理を行っても、まだ十分に余裕があることから、色々な衝突やバウンドなどに実時間での物理計算を行うことができるようになり、極めて臨場感が高く、エンターテイメント性の高いゲームとできているとのことでした。
さらに、高橋様には、実際に実機を持ってきていただき、その場で聴衆の方々に実体験していただく場まで作っていただきました。
普段からゲームに慣れている方はもちろん、ゲームに慣れていない方も、初めはおっかなびっくりでしたが、すぐに楽しくやられるようになっていました。
このように、三名の方々が、まったく違った視点から、ご講演いただき、かつ各々のアプローチの仕方も異なることが分かり、自画自賛となりますが、興味の尽きない楽しいワークショップとなりました。
ご講演者である三名の方々に、再度、お礼を申し上げるとともに、今後も興味深いワークショップを開催していきたいと思います。
(文責 ワークショップ担当:副会長 陶山)